オンラインMBAで得たかけがえのないもの
目次
“I am honored to communicate that you are part of IE’s Dean’s List. Congratulations!“
メールを開けた瞬間に飛び込んできた予想外のメッセージ。感極まって無意識に涙が。“I did it. I did it! I feel great!” と叫びながら、宿泊先のホテルメリアの部屋で何度もガッツポーズを決めていました。同時に、Global Online MBAで経験した辛かったこと、楽しかったことのすべてが、脳の奥底からあふれるように流れ出てきました。
初めてのマドリードでの対面期間、英語で思うように発言できず、質問責めになって落ち込んだこと、フォーラムで教授陣やクラスメイトから褒められたこと、グループワークでイライラし通しで苦労したこと、WhatsAppでクラスメートと他愛もないチャットをしたこと、かけがいのない同級生達とワインを片手に再会を喜びあったこと、時には言い争いをしながらも、最後はハイタッチでファイナルプロジェクトを終えたこと、これ以外にもありとあらゆる思い出が、寄せては返す波のように頭の中をかけめぐりました。
Global Online MBAで何を感じ、何を学んだか
2018年7月にGlobal Online MBA(GMBA)を修了した曽我です。海外MBAを夢見ては、現在の会社でのキャリア、家族の理解、年齢の壁といった現実に直面して諦めようとしていた矢先に、IEのGlobal Online MBAに出会い、夢を叶えることができました。Global Online MBAの素晴らしさを一人でも多くの人に知っていただきたく、IEで経験したこと、感じたこと、得られたものについて、印象に残ったエピソードを切り出しながら記していきます。
Episode 1: 対面授業での洗礼
開始早々にマドリードでのレジデンシャル期間があります。クラスメイトとの初顔合わせもそこそこに、初日の授業Communication and Presentation Skillが始まります。CNN出身の先生が颯爽と早口のアメリカンイングリッシュで自己紹介をして、BPのメキシコ湾での原油流出事故に関するBP社長の記者会見映像を見せ始めました。半分くらいしか言っていることがわかりません。
ビデオが終わると、「では、これからマスコミ対応のトレーニングで、BPの模擬記者会見を行います。BPのCEO役をしたい方はいますか」と教授が視線を投げかけます。皆が積極的に挙手する中、私は下を向いて「どうか、どうか私には指名しないでください」祈るしかありませんでした。
BPのケースでは指名は逃れたものの、さらなる試練が押し寄せます。教授に笑顔で「リーダーとしてのプレゼンの練習をします。あなたがこれまでに経験したリーダーシップについて語ってください」と、即興でのプレゼンが求められました。万事休す。とうとう私が指名されました。
皆が拍手する中、教室の前に出て、何とか笑顔でクラスメート達に視線を送りながら、MBAのエッセイにも書いた内容のスピーチを始めました。反応は微妙。2分程度のスピーチが終わると、クラスメートから質問責めに合い、容赦ないフィードバックを受けます。「アイコンタクトが十分でない」「スピーチに感情をこめるともっとよくなる」等々。どれもありがたい建設的なフィードバックですが、質疑応答で意気消沈した私の耳には入ってきません。「早く、早くこの授業が終わってくれ」と念じながら、その後を過ごしました。
Global Online MBAで得られたもの1:プレゼンスキル
最初は大変な思いをしましたが、その後のプログラムを通じて、英語でのコミュニケーション力の向上はもちろん、プレゼンスキルを高めることができました。クラスメイトの中には、プレゼンをドラマ仕立ての動画に編集して発表したり、PC上での投票を駆使して双方向性を高めた発表を行ったり、娯楽的要素もあるレベルの高いプレゼンをする人たちからの学びが多かったです。現在の仕事でも、英語のプレゼンを行う機会がありますが、Global Online MBAの経験を踏まえて、双方向かつユーモアも含めたプレゼンができるようになり、顧客からのフィードバックも上々です。
Episode2: Forumでのせめぎ合い
プログラムが始まって以来、出張や帰省にも常にPCを持ち歩いて、フォーラムをチェックしないと時間がとても足りません。フォーラムでも皆それぞれに戦略があるようで、なかなか面白いです。いつも最初に威勢よく意見を投稿するスイス人のAlirezaは、先行逃げ切り型。ノルウェー人のPradeepは20人くらいコメントが出るのを待って斬新な意見を切り込む、後半追い込み型。私は、図表を活用して議論を展開する作戦。
ただ、今週のトピックはコーポレートファイナンスで、ちょっと一筋縄ではいきません。DisneyとPixarの合併に関して、Pixarの企業価値算出のお題が月曜日に出されてから、既に丸1日誰も投稿していません。Alirezaも、今回は静観を決め込んでいるよう。具体的な数字が問われているから、最初にコメントするのは分が悪い。資本コストや永久成長率の前提も、突っ込まれないよう説得力のあるものにしておきたいところ。
DCFやEV/EBITDAの計算が多少間違っていても、早めに投稿してポイントを稼ぐか、それとも誰かがコメントした後に、少し視点を変えてM&A後の管理体制の観点からの意見を投じようか。
Global Online MBAで得られたもの2:視野の拡大
毎週のフォーラムでは、協力的な雰囲気ながらも競争力のある意見出しに向けた駆け引きがあります。基本的な質問に回答するのに苦労はしませんが、低い評価ポイントしか稼げません。他人と異なる視点を投げかけたり、難易度の高い質問に回答したりすると高ポイントがもらえます。毎週のフォーラムで投稿できる数も限られていますので、戦略的なアプローチが求められます。
そんなことも楽しみつつ、このフォーラムは私の視野を広げるに大変役に立ちました。私はこれまでコンサルティング会社と金融機関での勤務経験があったので、コーポレートファイナンス、ストラテジー関連の科目は肌感覚がありましたが、Global Online MBAの授業はより実践的な内容でした。
例えば、先のDisneyとPixarのM&A時における企業価値算出とM&A後の組織設計の検討は、机上の勉強レベルではなく、そのまま実務レベルで応用できる内容でした。IEで学習したことを、翌日から即座に業務に活用できるのはGlobal Online MBAの長所の一つです。
一方、オペレーションマネジメント、サプライチェーンは経験のない分野だったので、当該業界出身のクラスメイトの経験やフォーラムでの討論は、私の知的好奇心を大いに掻き立てるものでした。この2科目では、日本関連のケースも使用されていました。日本の回転寿司のスシローによる顧客行動のBig Data解析、米国NYのレストラン「ベニハナ・オブ・トウキョウ」による店舗レイアウト戦略は、オペレーションマネジメントの奥深さを感じるとともに、日本人によるビジネスセンスの魅力を再確認しました。
Episode3: 混迷するグループワーク
木曜日の帰宅途中、スマホでプレゼンの仕上がりをチェックする。成果物は、昨日から何の変化もなく白紙のまま。みんな一体何をしているんだ。怒りにも近い感情がこみ上げてきて、混雑する電車の中揺られながら、すぐさまWhatsAppで送信。
“Guys, your part is still missing. Due date is today! What is going on?”
しばらくすると、同僚達から次々とメッセージが入ってくる。
“I will update my part and upload tonight”
“Sorry, I can’t. I am on business travel this week”
“I thought the dead line was Friday”
何てこった、信じられない。“Give me a break! No more excuses!”とタイプしたが、送信するのはグッとこらえた。「グループワークって一体何なんだ」そうつぶやくしかなかった。
Global Online MBAで得られたもの3:国際的なビジネス環境下でのリーダーシップ
WhatsAppでのこんなやりとりは、普通にあります。事前に聞いていた通り、時間の感覚が日本人と外国人は全く違うということを体感することになります。Skypeミーティングの時間にメンバーがそろわない、課題の締切日にメンバーから成果物が出揃わないのは日常茶飯事。
また、一家言ある人が多く、期限間近でも、チャット上でメンバー間の意見が対立し、まとまらないこともあります。昨晩グループで確認した内容が、1人の反対意見でまた振り出しに戻り、グループ内に緊張が走ることもありました。逆に、慣れてくると、微妙な譲り合いの精神(悪く言えばタダ乗り)も出てきて、具体的なアウトプット作業がなかなか進まないストレスを感じることもありました。今となれば、こういう経験こそが異文化の多様性を受容する貴重な訓練だと思えるのですが、第1タームはイライラの連続でした。
第2ターム以降は、グループに課題が出されるとすぐ、私がスケジュールを明確化して担当を割り振るとともに、成果物の草案を作成して、グループワークを引っ張っていきました。毎週、メンバーも毎日の勉強で、土曜のオンライン授業の後は疲れ切っています。常に2科目同時並行でオンライン授業とフォーラムをこなしていくのですから、睡眠時間もままなりません。日曜日中に私が上記の資料を用意して、月曜以降それにメンバーが付いてくる形でグループワークを進めていきました。
レポートもプレゼンも草案は、どこまで作りこむかがポイントです。あまりに作りこみすぎると、アウトプットに貢献できる余地が少なくなり、メンバーに不満が溜まります。また、逆にシンプルなアウトラインの提示だけだと、どうタスクを進めるか困惑するメンバーも出てきます。私が作成する草案は、幸いにもメンバーから好評で、英語力のハンデを負いながらも、日本人の強みであるきめ細やかさを生かしたリーダーシップを発揮できたと思います。おかげで、ターム終了時には、メンバーからポジティブなフィードバックをもらうことができました。
また、逆にクラスメートからもリーダーとしてのあるべき姿を教えられました。アカウンティング科目は、私が苦手だったため、コンゴ人のクラスメートがリーダーシップをとっていたのですが、私が担当パートの作業に遅れていると、タイミングよく個別チャットでサポートしたり、レポート作成では校正までしてくれました。リーダーというのは、自らが汗をかくとともに、各メンバーに合わせてフォローするのが、あるべき姿であるということを、身をもって教わりました。
Episode 4: GMBAのクライマックス ファイナルプロジェクト
いよいよ今日は、ファイナルプロジェクトのプレゼンの日。我々のチームは、13時から101教室で開始。スマホを活用した皮膚がん診断システムと遠隔医療仲介サービスがテーマです。緊張の中、15分間のプレゼンが終了。メガネをかけたファイナンスの教授が、ビジネスプランレポートを読み終えるほどなく、矢継ぎ早に質問が発せられました。
「スマホの写真だけで、本当に技術的に皮膚がんか判断ができるのか?」
「最初の認証アプリの開発費用はどのように調達してくるのか?」
「誤診の際の賠償責任リスクには、どのように対処していくのか?」
どれも、事前に準備していた質問。前日に丸一日かけてリハーサルした甲斐がありました。最後に「Final Examはこれで終了です」と笑顔で言われ、教室を出るなり、メンバーみんなで“Well done!” “Good Job!” とハイファイブ。カフェテリアへ向かう廊下でも、クラスメート達とただただ肩をたたきあい労を労いました。言葉なんてもういらない。多くの苦楽があったファイナルプロジェクトが、ついに終了したたのです。
Global MBAで得られたもの4:社内起業家精神
コースの最後に課されるファイナル・プロジェクトでは、スマホを使用したオンラインクリニックに取り組みました。皮膚がんの発症率が世界一のオーストラリアをターゲットにしたビジネスで、スマホを使用した皮膚がん判定システムと遠隔医療仲介サービスが、我々のプロジェクトでした。
私は医療のビジネス分野は詳しくなかったのですが、幸いにもメンバーに心臓外科医と放射線科医がいたので、彼らが詳細なアプリの仕様やビジネスモデルを作りました。それに加えて、IT出身者がデモ画面を作り、マーケティングの人がプロモーションプログラムを、そして私がファイナンスを担当して、各人の専門性をフル活用して、スタートアップを疑似体験することができました。
ビジネスプランでは、システム開発費用、人の採用計画、資金調達等のビジネスプランを現実さながらに策定していきます。また、ファイナルプレゼンでは、審査員よりテクニカルな側面はもとより、誰がいくら出資し、株式持ち分をいくらにするか、ベンチャーキャピタルの出資分をどの程度にするかまで聞かれると想定し、準備を進めました。その段階になると、メンバー間での株式持ち分をどうするか、持ち分をとるならメンバーが実際にどこまで資金を出資できるかといったことまで話合うので、緊張感がありつつも熱いプロジェクトになりました。
会社勤めの身では、事業計画を策定する機会はあっても、株式持分といった資本政策まで検討する機会を得ることは、なかなかないのではないでしょうか。そういった意味では、このファイナル・プロジェクトは、当方の社内起業家の見識を深める貴重な経験となりました。
Episode 5: 卒業式 Forever IE
ファイナル・プロジェクト終了の余韻もそこそこに、気が付けばもう卒業式の日。MBAを修了したことは嬉しいは嬉しいものの、ここで出会えた同級生達と式が終わればしばらく会えなくなると思うと、一抹の寂しさも。クラス全員ガウンを着て、みんなで集合写真をとったり、惜しむように最後の時間を楽しんでいました。
卒業式では、どなたからか頂いたスピーチの、“Graduating today from this school, you are the leaders, opinion-makers and problem-solvers of tomorrow” という言葉に、目頭が熱くなり、気が引き締まる思いに。
式も終わり、会場の外にでるとInternational MBA、Executive MBAやLaw Schoolの卒業生たちも交じりあって、グラスを片手に歓談がなされています。マドリードの夕陽のなか、私もクラスメートを探し、互いの未来に乾杯をして周りました。気付けば、さっきまで付近にいたクラスメート達が、だんだんと家族や友人の元へと。22時を過ぎ、辺りは暗くなってきました。長くもあり短くもあった私のGlobal MBAライフも、どうやらこのあたりでフィナーレを迎えつつあるようです。
喜びと寂しさが混じりあうホテルへの帰り道、WhatsAppを開くと、Forever IE, Forever GMBA、いつかまたみんなで会おうぜと万感の思いを込めて、Class Groupに送信しました。
“Thanks, guys. Good luck and goodbye. See you next time‼”
Global MBAで得られたもの5:プライスレスなネットワーキング
Global Online MBAのレジデンシャル期間は毎回1週間ですが、普段クラスメートと会えない分、勉強はもちろんソーシャライジングも集中して行います。夜の9時、10時くらいまでグループワークをして、それからディナーも兼ねて街に繰り出します。そのため、時差ボケと相まってクラスメートとずっといる感じにもなります。同じ釜の飯を食べる仲間といっても過言ではありません。
最後のレジデンシャル期間には、それまで実際に会っている時間はそれほどでもないのに、目の前にいるクラスメートが、まるでもう何年も知り合っている旧知の友人と錯覚するくらいです。Global Online MBAのネットワークは、Priceless。世界各国のクラスメートとはWhatsAppやFacebookでつながっていて、今でも近況報告や出張などで再会した写真がアップされ、全く色褪せません。
どんな困難も乗り越える自信がついた
以上長々とGlobal Online MBAで経験したことと、そこで得られたものについて記してまいりました。リーダーシップ、ネットワーキングもそうですが、それらも含めて得られた最も大きなものは、世界規模での経営者視点と、どんな困難があっても乗り越えられるという自信です。世界中からきた優秀なクラスメイトと切磋琢磨するこの環境がなければ、そのような視座は得られなかったと思います。
Global Online MBAは、対面授業とオンライン授業の融合プログラムですが、他のプログラムと比べてもその内容の充実度、満足度は何ら遜色ないものと言えます。各種テクノロジーが発達した昨今では、Web会議システムを活用してリアルタイムかつ自宅で授業や議論を双方向に行えますし、グローバル企業での働き方を疑似体験できるプログラムとも言えます。
オンライン主体だから勉強やネットワーキングが不十分になることは全くなく、むしろ日本人ならでは丁寧さ、思慮深さといった強みが十分に発揮できるプログラムだと実感しています。おかげさまで成績優秀者に授与されるDean’s List Honorsを受賞することができ、私の人生のアルバムには欠かせない貴重な期間となりました。
トップスクールでありながら、現在の仕事も続けることのできるGlobal Online MBAは、下方リスクを抑制しつつ、リターンを享受し、則仕事に活用できる投資対効果の大変高いMBAではないでしょうか。私は、現在はグループ全体でのリスク管理を行う部署にて、海外子会社とのWeb会議、グループ資本管理といった業務で早速にMBAの知識・経験を活かしております。この記事を読まれた方の一人でも多くの方が、Global Online MBAに関心を持たれ、充実したMBAライフを過ごされることを祈念いたします。