自由さと多様性:IEからGoogleへ
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渋谷ストリームに移転したばかりの新しいオフィス。多国籍な社員で賑わうカフェラウンジで、2017年にIEを卒業し、働きたいテクノロジー企業ランキングの常連Google社に転職された、飯田大輔さんにインタビューしてきました。
35歳からのMBA留学
大学卒業後、広告代理店のアサツーディケイと電通で合わせて13年程働いた後、MBAに出願しました。キャリアの前半は広告を売る側の営業部門、後半は広告で売る商品を作るメディア部門で働いていました。
メディア部門で商品企画をしていた時、商品の事業収支や収益モデルを考える機会があったんですが、大学で専攻した心理学や社会学、今までの職務経験とかけ離れた領域だったので苦労しました。事業マネジメントや収支管理の知識と経験が不足していることを感じて、MBAで学びたいと思うようになりました。
――IMBAの平均年齢が29歳くらいなので、年齢や考え方のギャップはありましたか?
僕も日本の会社にいたので、年功序列の考え方が全くないというと嘘になります。ただこのままだと、固定された階層意識から抜け出せないと思い、MBAでは年功序列の考えを取り払って、若くて自分より経験が少ない方の話もまず聞こうという方針を持って行きました。
アドミッションにも、あなたは年齢相応に見てもらえないかもしれないけど、大丈夫?と聞かれたんですが、僕は逆に若い人たちじゃないと出てこない意見や、デジタルに精通した彼らの新しい発想が知りたいと思っていました。
Googleも本当に年齢を問わないんですよ。たとえば、すごく若くて職位が高い方もいるし、年齢は上でも管理職になりたく無くて、日本語でいうと平社員として貢献する方もいます。年齢が高いから必ずしも職位が高いというわけではないですし、日本の年功序列の考え方から少し解放されたかもしれません。
――いくつもプログラムや学校の候補がある中で、IEを選んだ理由は何でしたか?
僕はほぼ単願でした。まず、出願時点で34~35歳だったので、留学後のキャリアを考えると1年制がいいと思いました。Financial TimesやQSのランキングが高い1年制の学校はアメリカには少ないので、自然と1年制が主流で多様性の高いヨーロッパのMBAに注目しました。
ヨーロッパMBAの中では、大企業の経営や既存のものを良くすることを学ぶプログラムより、新しいビジネスや商品を考えて作ることに重きを置いたプログラムを探して、スタートアップ企業の考え方をMBAの中に取り入れているIEを選びました。
インターン、そしてGoogleに転職
在学中にGoogle日本法人でMBA対象のサマーインターンをしました。1月から12月までの留学期間だったので、夏休み1ヶ月とLab Periodという期間を併用して、2ヶ月インターンをすることができました。インターンの内容をレポートにまとめて単位認定してもらう制度を活用しました。
――その流れで正社員の内定をいただいたということですか?
インターンは直接選考には関係しませんが、インターン後に正社員に応募した結果、在学中ギリギリの11月後半に内定を頂きました。帰国後、熟慮した結果、Google日本法人に転職しました。今は、もともと広告代理店で働いていた経験を生かして、大手企業中心に広告営業をしています。
IEとGoogleの共通点
よくIEの卒業生とGoogleのカフェで話すんですが、カフェにいろいろな人がいるごちゃ混ぜ感や、自由な雰囲気がすごくIEに似ているんですよ。日本の中では稀有に多様性が実現していて、会議をするにしても、色んな国籍、性別、職務経験のある方と日々出会えるところが楽しくて、魅力を感じています。
テクノロジーの会社とIEは相性がいいですよね。両方とも将来を見据えて、多様性や柔軟さを重視する文化が似ています。僕はIEをスペインの学校だから選んだわけではないので違和感がないんですが、受験生や社内の人にはなぜスペインの学校を選んだのかと聞かれます。たまたまスペインにあるだけで、中身は完全にインターナショナル・スクールですよね。
――マドリードという街の魅力と、IEの立地は非常に良いので、世界中からの学生やエグゼクティブを惹きつけているのは大きいと思います。マドリード生活で特に印象に残っていることはありますか?
圧倒的に覚えているのが、青い空。つまり天気が良い。それゆえ勉強が大変でも前向きになれることと、他の学校に比べて都会にあるのが僕にとっては良かったです。ちょっと疲れた時に映画を見に行ったり、買い物に行ったり、友達とバーに行ったりということが気軽にできました。ほとんどの受験者は都会に住んでいると思いますが、今と変わらない生活を保ちながらトップMBAに行ける環境はそんなに多くないのかな。IE以外だとLBSとボストンの学校くらいですかね。他の学校はちょっと郊外にあるから、住環境が変わるのかなと。
MBAが役に立っていること
ハードスキルだと、不足していたファイナンスやオペレーションの知識を一通りMBAで学べたのは大きかったです。あとは、マイロ・ジョーンズ教授の地政学や、ダニエル・ブレイク教授の政財界(Business Governmental Society)を学んだことで、視野が広がりました。様々な立場や経歴の人が発言した時に、自分と意見が違ったり、理解しにくいことがあったりしても、相手がどういう視点からそう考えているかを察することができるようになったのは良かったと思います。
ソフトスキルだと、多様性に富んだ環境でグループワークをすることで、自分の考えを持ちつつ、より柔軟に物事を捉えられるようになりました。たとえば、最初の半年は固定のグループで課題を進めるんですが、どのグループも進め方でもめるんです。どの進め方が正しいということはないので、最終的にグループで可能な限り建設的に進め方を修練する中で、主観的に考えつつ客観的に自分を振り返る習慣が身についたのは大きな収穫でした。
僕は、留学する前、外国人の同僚がいると少し身構えていたんですが、今はまず聞いてみようとか、この人どういう人だろうと興味を持って接することができるようになったと思います。
Googleでの新しい挑戦
Googleには仕事の20%を好きなプロジェクトに充てられるというルールがあるので、それを使ってGoogle for Educationという、日本の各小中学校や大学にChrome Bookを導入してもらって、授業のデジタル化や効率化を実現するプロジェクトのお手伝いをしています。
あと、Googleスタートアップという拠点がこのビルにできるので、そのプログラムで合うものがあれば手伝いたいです。Googleにいてできることに、今年、来年と挑戦していきたいです。
MBA受験生ヘのメッセージ
MBA留学って一生に1回の経験なので、受験生には納得して学校を選んで欲しいです。そのために重要なのは、どういう目的でMBAに行くかということだと思います。なんとなく友達や知人もMBAに行くからという理由ではなく、MBAに行って具体的な何かを変えたい、何かに挑戦したいという目標があるからこそ、変わったり挑戦したりできると思うんです。それを念頭に置いてMBA留学をして頂けたらいいなと思います。