建設業界・社費生から見たIE
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社費制度がある企業群は、一般的に金融やメーカーが多いですが、大手総合建設会社の清水建設から社費でIEへ派遣された、石井さんにお話を伺いました。
全体を俯瞰するスキルが役立っている
留学から帰国した当初は、開発用地を仕入れる不動産開発部門に戻りました。その1年半後、今春から本部内の経営企画的な部署に配属になりました。不動産業の利益を2023年までに増やす中期経営計画を作成し、前線の人たちと実行戦術を考える部署です。並行して、本部のトップを政策秘書的に補佐する業務もしています。戦略に関わりつつ、ボトムアップで意見を言う機会もあるので、非常に面白いです。IEで学んできた全体を俯瞰する見方が今まさに役に立ってきています。
――今、仕事で注力されていることは何ですか?
中期経営計画で不動産部門として出している5年で5000憶円不動産開発に投資するという目標は、国内外含めての数字です。現状、海外はASEAN圏での投資が中心ですが、もう少しエリアを広げることを頑張らなくちゃいけない。計画だけじゃなくて実行に近いところまで主体的に頑張りたいです。
――この間も海外に行かれてましたよね。
最近、出張ばかりなんです。インドネシアに行ったり、シンガポールに行ったり。インドネシアはとにかく活気がすごい。街がどんどん変わっています。こういう国に投資するか、安定した国で厳しい競争の中で投資するか、戦略を考えるのは面白いです。
建設って本業は、お客様から仕事を受注してビルなり工場なり何でも建てて引き渡すことなんですが、今後国内は人口減にともなって需要が減ってしまう。合併で規模拡大しても、多分1+1が2になる会社ってなくて、1.5ぐらいになってしまう。だから、どの建設会社も海外進出とか、不動産や、エネルギー事業、太陽光発電に事業拡大しています。うちの会社だと宇宙ビジネスとか海洋関係にも進出しています。
宇宙にロケットを打ち上げる会社に出資して、人工衛星を打ち上げるためのロケットの発射場を作る話があるんですよ。今建設業界はどこも絶好調なんで、好調な間に新しい事業に投資して5年間で成長させていこうとしています。
――大きな会社だからこそ、いろいろなキャリアの可能性がありますね。
そうなんです。留学前はなかった新しい部署ができていました。IEはアントレプレナーシップが強いので授業を受けていましたが、当時は不動産部門に戻ると思って興味を持っていなかったんですよ。Labも、会社をどう考えるか学ぶ、Business Impact Labを選択していました。それが帰ったら、ベンチャーに投資するとか、アントレプレナーシップ的な動きが世間的に強まってきていて、自分の会社でも始めているので、もっとアントレプレナーシップ系の授業を取っておけば良かったと思っています。ただ、留学前より、会社がどうして新しい事をするのか、前向きに理解できるようになりましたね。
社費生は留学後、社内で色々やってみたらいい
マーケティングやオペレーション、今まで業務で触れなかった科目は新たな知識を習得できて良かったです。MBAの必修科目って、初学者にも対応しているので、学問として難しくはないんですが、それをグループワークや討論形式で学ぶところが難しい。日本企業の阿吽の呼吸が全く通じない場で、多様性を実戦できたのが一番大きかったです。
ESG投資やSDGsという潮流に対応すべく企業も変わりつつあるところですが、会社で日々の業務に追われていると、なかなか実感がわかない。自分もMBA卒業した今だからこそ、社会の要請や、多様性があると会社にどんな利点があるか考えられるようになりました。
Why IE?
会社で留学期間が1年間という制限があったのでヨーロッパのビジネススクールを考えました。色々な話を聞く中で、IEは小規模校じゃないので選択科目の数が多いのも良いし、日本でも頻繁に卒業生の集まりがあって楽しそうだなと思って選びました。会社で、お前スペインで遊んで来たんじゃないか、って言われます。楽しんで来ましたよって言いますけど。人生の中で1年くらいそういう時間があっても良いんじゃないかと思います。
私の場合、妻子は日本に居て、単身留学したんですが、渡航したばかりの8月や、2学期が終わったタイミングに旅行も行きましたね。。短期の休みにも旅行しましたが、あまり旅行していると帰国後に妻からクレームが入るので、程々に。
――1週間の短期交換留学でシンガポールにも行かれてましたよね。
あれも良かったですね。IEのマイナス面を挙げると、アジア人比率が十何%と低いですよね。これは欧米のスクールどこでも同じかもしれませんが、IEはアジアのケースが少ないんです。自分の場合、会社が海外展開もアジア中心なので、もう少しアジアの話やネットワークが出来ると良かったなと。SMUに行った時は、アジアでのケースが題材として選ばれていたので、本当に面白かったです。1週間っていう期間もちょうど良かったです。
MBA社費受験生へのメッセージ
社費の人って、世間的にはエリートというか育ちの良い人が多いと思うんですよね。いい大学を出て、いい会社に入って、いい部署で働いて、本流を進んできた人が多い。でも、そういう場にいるとベンチャーや、世間で起きていることを知らなくても社内では生きていけちゃう。とはいえ、せっかく社費で1年間外に出られる機会なので、色々な意味で視野を広げる留学ができるといいと思います。
あと、国はアメリカやイギリスだと英語が通じるから生活面では楽ですが、折角なら面白い環境に飛び込んでみるといいかもしれない。一生の内、そうそうスペインに仕事で行くことはないですよね。定年もどんどん伸びている会社員人生、その内1年くらい面白い国に行って面白い体験をするのも良い。あんまりプレッシャーを感じず、受験校考えてもらいたいです。
留学後、いきなり何かが変わるわけじゃないです。自分は元の部署に戻っていますし、配属先を選べないことが多いので、何のための留学か、帰国直後はわかりづらいことも多いと思うんです。そういう時、自分が今そこにいる意味が分からなくなって転職を考えたりとかもあると思うんですが、まずは今いる場所で色々頑張ってみたらいいと思います。それぞれ留学前にもともと持ってた想いもあると思うんですよね。MBA取った後会社をこうしたいとか、こういった部署を作りたいとか、色んな想いがあって社費の人は留学すると思うんですが、それを実践する機会を伺って頑張ってほしいです。