社費生として打ち込んだ起業
目次
IEの目玉の一つであるStartup Lab、そこから選ばれたチームが進めるVenture Lab。さらにVenture Labの優秀チームが参加できるVenture Day。社費生でありながらアントレプレナーシップのカリキュラムを存分に堪能した紫藤さんにお話を伺いました。
医療とビジネスに興味があった
高校時代から医療を通じて社会貢献したいという想いがあり、2007年に京都大学薬学部に進学しました。大学院卒業後、ドイツのバイエル薬品にファストトラックプログラムというコースで入社しました。数十年前にドイツ本社で始まった、MR(営業)として経験を積んだ後、国内外のマーケティング部署に勤務しながら海外のMBA取得を目指せるコースです。私は、営業で2年、マーケティング部署で3年半、プロダクトマネージャーとして新薬の上市を担当した後、2018年9月にIEに留学しました。
研究ではなくビジネスの道に進んだのは、将来、弟と起業したいからです。家族が会社を経営しており、幼少期からビジネスに馴染みがありました。まずは私の興味のある医療分野でビジネスの基礎や現場感覚を学びたいと思い、製薬会社に入社しました。
MBA受験
受験勉強は丸1年かかりました。大阪は予備校が少なかったので、週末、東京の予備校に新幹線で通っていました。新薬が上市したばかりで業務が忙しかったのですが、上司に仕事と受験勉強を両立できるよう、かなりサポートをしてもらいました。
――最終的にIEに進学した決め手は?
最初はアメリカのMBAに興味があり、何校かキャンパスビジットしました。医療とビジネス、アントレプレナーシッププレナーシップに強く、ヘルスケアに特化したプログラムがあるノースウェスタン大学(Kellogg)やデューク大学(Faqua)に興味を持ちました。Kelloggはマーケティング分野に圧倒的な強みがあり、共同作業に主眼を置いたカリキュラムが素晴らしく、最後まで迷いました。結局、私が一番したい起業に主軸を置いた授業やStartup Lab、Venture Labを通して体系的にアントレプレナーシップが学べるIEを選びました。
卒業生の方々の印象が良かったのも決め手の1つでした。面接やエッセイ対策をして頂いたり、キャンパスビジット後のディナーでIEやマドリード生活の魅力を教えて頂いたり、先輩方には大変お世話になりました。皆さん、優秀なのにエリート感を出さない、気さくな方ばかり。型にはまらず、個性的で、なんて面白い学校なんだって思ったんですよ。
Startup Labを選んで
偶然、IE同期に京大の研究室の先輩がいらしたんです。その守口さんから起業を誘って頂いたのが、Startup Labを選択したきっかけでした。もともと京大のある研究室がiPS細胞の心筋細胞を国内展開していたのですが、守口さんがヨーロッパでも展開するためにその研究室の教授と交渉し、起業することを検討されていました。面白そうな仕事ですし、実現すれば人生で大きな仕事をやり遂げることができると思い、守口さんとの起業を決めました。
――9月に入学して、 11月からStartup Labが始まって、学業と両立していたんですよね。
そうですね。Startup Labは3人以上いないと始動できないので、メンバー集めが大変でした。iPS細胞は再生医療を実現するために重要な役割を果たす画期的な細胞として期待されています。にも関わらず、ヨーロッパでは全然浸透していなかったので、地道に話を聞いてもらって、なんとか初期メンバーを集めました。実家が大規模農場を経営しているメキシコ人。臨床試験の治験コーディネーターのコロンビア人。このプロジェクトが収益化できそうという理由で入ってくれたアイルランド人。彼はホテルビジネスで既に起業しており、英語もネイティブなのでプレゼンでも活躍してくれました。
――Startup Labではどのような活動をしていたのですか?
Startup Labでは5週間、毎週金曜日に行われる投資家への説明会に向けて、プレゼンの作成方法やスライドの見せ方、プレゼン時の振る舞い方を学びました。特に、外国人はプレゼンスキルが高く、日々勉強になりました。また、授業ではインド人のSugata教授の”Lean startup”が特に印象に残っており、ビジネスモデルの構築や仮説検証の方法を体系的に学べました。Startup Labは51チームありましたが、最終的に私たちのチームは2位を獲得。無事Venture Labに進むことができました。
――Elective Periodの一部であるVenture Labについて教えて頂けますか?
Venture Labは半年間。実際に起業したい方が多かったです。既に起業しているメンターにビジネスプランを見てもらって起業準備できる、有難い期間でした。私たちは、ヨーロッパの製薬企業の研究者がiPS細胞をどの程度使用しているか、日本の教授が持つ細胞を研究材料として使用できそうかを確認するため、デュッセルドルフにあるバイエルの研究所に行きました。日本の教授とSkypeで繋げて、iPS細胞や実験での使い方を説明しました。結果、バイエルの研究者が興味を示してくれて、実際に現在使用している細胞とiPS細胞を比較する試験を組んで、有効性を確認してくれました。
また、IEのStartup Labの名物教授Paris教授の伝手でヨーロッパの製薬会社に顧客開拓を行いました。会社設立についてはJeffrey Char教授に大変お世話になり、会社を設立すべき国やファイナンス関連、Equityの配分まで相談に乗っていただきました。
5人で話し合った結果、卒業後は守口さんとアイルランド人、私の3人で起業することにしました。会社設立の準備を進めていましたが、諸事情で続けられなくなり、残念ながら断念しました。起業は実現しませんでしたが、守口さんという素晴らしいビジネスパートナーやIEの教授の方々、バイエルの研究者の方々と出逢え、大変良い経験ができました。今、私はバイエルに戻り、守口さんはVCに就職されましたが、今後もコラボできる機会がたくさんあると思っています。
――起業家のようにプロジェクトを動かしながらMBA生活を送るのは、忙し過ぎませんでしたか?
確かに、IE生活の半分以上は起業に捧げていたと思います。でも、学生生活も楽しめましたよ。マドリードは都会で、街並みも美しく、学校近くのSerrano通りで買い物をしているだけで優雅で幸せな気分になりました。あとIEはマドリードのバラハス空港からタクシーで15分ほどと非常に近く、近隣のヨーロッパの国々への旅行も楽しめました。
MBA受験生へのメッセージ
人生でやりたいことっていくつかあると思うんですけど、MBAはそれを具現化できる場所だと思います。自分自身のことをゆっくり考えられて、自分のやりたいことに全てを費やせる1年。こんな期間って、人生に1回ぐらいしかないと思います。受験勉強は大変だと思いますが、素晴らしい1年が待っていますので、諦めずに頑張ってください!
最後に、このようなたくさんの素晴らしい出会いと貴重な機会を与えてくださったバイエル薬品と、サポート頂いた皆様には心より感謝申し上げます。