南アフリカでのコンサルティングプロジェクト
目次
Social Impact Labは、Lab Periodの選択肢の一つで、任されるタスクが経営の根幹に関わるコンサルティングプロジェクトです。受け入れ先の企業やNGOにも、現状の課題を打破するための解決手段としてMBAの学生を受け入れ、社内の人材と化学反応を起こしたいという緊張感があリました。南アフリカでコンサルティングプロジェクトに参加した体験記を寄稿します。
Social Impact Labとは
他のLabとの比較は以下の通りです。
- Start-Up Lab:起業案を作って投資家にピッチする(0→1の価値を創る世界)
- Business Impact Lab:大企業の経営コンサルタントとして事業案をピッチする(100→1000を目指す)
- Tech Lab: テック系大企業にコンサルタントとして事業案をピッチする(100→1000を目指す)
- Social Impact Lab: 社会的企業やNGOにコンサルティングする、マドリードと南アフリカのヨハネスブルグの2拠点から選択(10→100の課題に取り組む。
Social Impact Lab対象企業は、創業2年ぐらいのITを使った新たなアプローチをするベンチャー企業がほとんど。社会的企業といっても、実際の業務は財務、マーケティング、営業、等々、一般的な企業と同じです。Social Impact Labでは、商品やサービスの主な顧客が貧困層だったり、従業員や取引先を経済的・社会的に恵まれていない層から積極的に雇用、調達したりしている場合、社会的企業と定義しています。
このプログラムは、EmzingoというIEの卒業生が2008年に設立した社会的企業が運営しています。IEを始めとした世界中のMBAの学生を集め、南アフリカ、スペイン、ペルーなどの社会的企業やNGOに派遣してコンサルティングプロジェクトを提供したり、企業向けに研修をする団体です。Emzingoの幹部にIEの教授がいて、IEのプログラムとのパイプ役を担っています。
選考プロセス
他のLab同様、コアターム中に説明会が開かれます。倍率は大体1.5〜2倍くらい。選考は以下の3ステップで決まります。
- エッセイ(6題の長文をコアの忙しい時期に書くので、心が折れそうになった)
- グループ面接(5〜7名くらいでのケーススタディ、私の時は「ある途上国のFin-tech分野で起業した会社が経営課題を抱えていて、どう支援するか」というテーマ)
- 個人面接(今までのキャリア、今後どのように働きたいか。志望理由と、自分がどのように貢献できるか)
ヨハネスブルグにはIEから合計14名、他大学からの6名を加えて総勢20名で参加しました。 学生の出身国は米国が半分程度、他は中南米、イタリア、ルクセンブルク、ロシア、カナダ、ノルウェー、日本。学生の経歴は様々ですが、マドリードで知り合う学生よりも、公共機関寄りな経歴の学生が多かったです。例えば、国連、外務省、米国の海外協力隊(アフリカなどで教育のボランティア)、ワシントンでの政府向けシンクタンク、BIG 4系のコンサルティング会社でブラジルでCSR担当など。残りは起業家、資源開発のエンジニア、戦略コンサルタント、会計士、サプライチェーン管理など。卒業後に国際機関に転身した仲
間もいます。
Social Impact Labの活動内容
最初の1週間は、オリエンテーション週間で、講義形式にて南アフリカの歴史(アパルトヘイト、マンデラ博物館視察)、政策(BBBEE:黒人経済強化政策。アパルトヘイト時代に不利益を被った黒人や有色人種に対して経済的特権を与えるもの)、旧黒人居住区(タウンシップ)の取り組み(起業家やNGOによる再開発や、CSR資金を利用したPC供与とソフトウェア教育など)等を学びました。
その後、学生は大学側から指定される個別の企業に配属されます。私が配属された企業は就職情報を割安で受け取れ、速やかにマッチングするというITサービスを構築中のベンチャー企業でした。平日の4日間は朝の10時から16時まで事務所で働き、夜は調べ物をしたり、ジムに行ったり、ルームシェアしていた友人と一緒に夕飯を食べたりして過ごしました。毎週金曜日は、Emzingoでのフォローアップ期間となり、お互いの活動内容のシェアや、デザイン思考などの追加的なワークショップを受講する時間を過ごしました。
プロジェクトから得た学び
多くの学生が、マドリードでは得られない現地の体験、全く違う文化での生活、一生の友達ができた、と言っていました。私にとっての学びは、ごく一部のスター経営者とは違う、等身大の起業家が抱える悩みを知ることや、前向きに仕事に取り組んでいこうとする人々の熱気に触れることができたことです。
Post MBAでどう生かせそうか
私は社費留学なので、元の会社(金融業界)に戻ります。幸い、アフリカ関連の案件を担当することになったので、現地に思いを馳せながら情報収集を行い、起業家の立場に寄り添ったサービスを提供できるよう努めています。
私の仕事は、10割の意思決定をするために、8割、9割の情報を集めてから決断する風土があるのですが、ベンチャーの場合はスピードが命です。限られた時間で知恵をひねり出して集めた2割の情報で、経営者の意思決定の支えになれるか、という現場を経験できました。Social Impact Labでの経験は、異なる国や業界の方々と接する際に、相手の立場を理解する補助線になると思います。
Social Impact Labをお勧めしたい人
- 多様性が豊かな場所で、物怖じせず自分の意見を伝え、様々な立場の方々の声に耳を傾けられる人
- アメリカンホームドラマのような英語環境での生活を存分に経験してみたいと考える人
- ベンチャー企業での経営に携わりたい人
- 体力のある人
私にとっては、派遣先の企業規模が小さく、経営者や従業員と1か月間朝から夕方まで膝詰め合って経営改善にむけた活動提案をできることが魅力でした。私自身、途上国の勤務経験もあったので相乗効果もあると思いました。皆さんもチャレンジしてみてください!