フランスのスタートアップ界隈で働く
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2017年7月にInternational MBAを卒業した浦部さん。卒業後もスペインに滞在し、インターンシップを経験。その数ヵ月後にフランスのパリで日系スタートアップに就職。ヨーロッパの非英語圏で就職するまで、どんな経緯だったのか聞いてみました。
授業から起業家ビザへ
IE在学中は、起業の勉強と準備に一番力を入れていて、授業もとにかくアントレプレナーシップ分野ばかりとり、他にも起業に関係することをしていました。同期入学の学生は主体的に動く人が多くて、自主的に起業アイデアを発表する場を作ったのが面白かったですね。
授業は、アントレプレナーシップ分野の名物教授Paris de E’trazのKnowledge Incubatorが特に良かったです。彼の授業は自由度が高くて、好きなように時間を使えたんです。授業の範疇を超えたことをたくさん学べたことも海外就職の助けになりました。一番良かったのは、実際にスペインの起業家ビザを申請できるレベルのビジネスプランの書き方を教えてもらったこと。スペイン語ではなく英語で書類を提出して、本当に起業家ビザが取れたんです。
もともとヨーロッパで働きながら起業準備をしようと計画をしていたので、スペインでインターンを見つけて滞在を延ばしていたんですが、インターン期間中に起業家ビザを取れたおかげで、スペイン滞在期間をさらに伸ばすことが出来ました。
スペインでのインターンシップ
とにかくがむしゃらに、無給でもいいからと企業に応募し続けました。スペイン語のレベルもIEに来て初めて学んだレベルでしたが、アタックし続けたことが功を奏して、インターンの機会を射止めることが出来ました。
インターンもすごく面白かったです。インターンシップ先はマドリードにあるファッション系ベンチャー。ファストファッションに在庫管理システムを導入して、ZARAのオペレーションを他でも真似できるようにするシステムを作っていました。ヨーロッパ中で展開していたので、Slackでの会話やミーティングは英語でした。スペイン人と働くと、スペインのカルチャーが分かって楽しかったです。IEは学生が多国籍で、国連にいるみたいじゃないですか。実はIEにいてもスペインのことはよくわからない。
――スペイン人と仕事してみて、どう感じましたか?
スペイン人は真面目なんですが、良い感じで力が抜けています。だからいつもオフィスに行って、12時くらいになるとSlackでどこの昼飯いく?って投票して、みんなでランチに行ってスペイン語でわいわい楽しんでます。
そしてフランスで就職
海外就職ってやっぱり気合ですね。IEの名前は、スペインのスタートアップ界隈で知られています。IEを卒業したばかりというブランドがあって、インターンなら給料も安いので、受け容れられやすかったと思います。
――スタートアップの社長とはどのように出会ったんですか?
IE在学中、高齢者向けビジネスの立ち上げを考えていた時、今働いている会社の社長に相談に乗ってもらっていたんです。結局自分では起業せず、その時ちょうど社長がヨーロッパで支店を立ち上げる話に乗ることにしました。
――Triple Wという会社について教えてください。
Triple Wの由来は、WWWという世界中で使われている規格。創業者の方がそれくらい浸透させたいという思いを込めて、この社名にしたそうです。主に高齢者向けに、トイレに行くタイミングを予知して教えてくれるデバイスを提供している会社です。特に介護施設で使ってもらっていて、介護者が適切なタイミングでトイレに連れて行く支援をしています。
高齢者で施設にいる人の6~7割はオムツ使用者で、何かしら排泄の問題を抱えています。例えば尿意を感じないとか、認知症でうまく伝えられないとか、身体が不自由になって間に合わないとか。介護施設のスタッフも忙しいのでオムツ頼みになり、高齢者は動く必要がなくなり、身体が衰えるという悪循環があります。でも、今まで出来たことが出来なくなると気持ち的に参るので、極力自分のことは自分でした方がいいんです。このデバイスをつければ、自動で介護人のスマホに連絡が届いて、トイレに連れて行ってもらえます。
現在は主に病院や介護施設向けですが、自宅で出来る限り介護するという政府の意向も踏まえて、今後は個人向けへの展開も考えています。お腹に測定デバイスをつけて超音波で膀胱の大きさを計測し、一定以上溜まったら通知するという仕組みです。医療デバイスではなく小型家電という位置付けで、個人用に販売予定のものは、トイレトレーニング完了前の就学前児童向けにも対応します。日本に本社があり、フランスのパリとアメリカに支社があります。
――Triple Wのパリ支社は浦部さん1人ですか?
もう1人日本人がいます。自分は営業、人事、経営をしていますが、一番大変なのは言語。フランスの病院や施設に行く時、すごく不利になります。業界団体に入ったり、高齢者向けビジネスに従事する人たちのコミュニティに入ったり、同様のテーマを持つスタートアップが集まるコワーキングスペースに入ったり、できる限り工夫しています。
現場には通訳に入ってもらって、アプリ自体は多言語対応です。ただ、フランスはビジネスの仕方も、パーティで会話しながらなので、みんなフランス語で話している時にいきなり英語で話すのも勇気が要るんです。最初の掴みのフランス語はできるようになりました。今度1人フランス人が入ってくれるので、どんどん助けてもらいたいです。
――フランスでの日本のスタートアップへの印象は?
認知度ゼロですね。なんとなく「日本って進んでるよね?」というイメージはあるみたいなんですけど。フランスは遅れているというか極端というか。未だに小切手を使うんですよ。シェア自動車は街中で好きなように使えて便利なんですが、一方で小切手も使う。面白いですね。
IEでの経験が活きていること
IEで学んだことで、今の仕事で活きているのは、いろいろな考え方の人たちと、いろいろなことを一緒にしてきた経験。突然初めての国の人から連絡がきても、自信を持って対応できるのはIEでの経験のおかげです。昨日もナイジェリアから電話があったんですが、IEで学んだからこそナイジェリア人の友達ができたし、世界が広がったと思いますね。IEには世界と繋がっているというか、視野の広い人も多かったので。将来的には、自分で何か新しいサービスを作って世に広めて、世の中の課題を解決したいですね。